平成17年 3月28日(土)「DX歌舞伎町SM大会 」ライブレポート-上
   

「劇場に足を運ぶお客さん全てが、鼻責めマニアではないだろう。相手は人気の踊り子さんだから、彼女の鼻フックを嫌う人もいるだろう。」

先生のスナイパーでの記事には、こんな事が書かれていました。劇場での鼻責めショウは、「マニアさんとの交流」を主にしたライブではなく、耽美会の鼻責めを組み込んだ「見世物」を作らなくてはいけない。元来、他人の真似を良しとしない先生の事ですから、私の予想を大きく裏切るショウが展開されるだろうと、期待と一抹の不安を胸に、劇場に足を運びました。

「見世物を提供してきた歴史と力強さ」が劇場の素晴らしい文化だと私は感じています。入り口から独特な閉鎖感、まがまがしい雰囲気。流行りとは程遠い、ノスタルジックな空間。観るものを選ぶような佇まいに、私の友人であるイラストレーターの女の子は「SMだけで怖いのに、この雰囲気は更に緊張させる・・・。」と一瞬深く息を吸い込んでから、階段を下りていきました。実は私も混沌とした気分の中にいて、「どうか、お客さんが帰ってしまいませんように」とか「失敗しませんように」・・・等早くも「SM大会」の意味に圧倒されているのでした。

蛍光灯の青、赤、ピンク、スポット。耽美会が出来る限り削ぎ落とすものたちが、舞台に集結しています。暗い会場はお客さんでひしめき合い、私達は一番後ろの端っこで小さく固まっていました。司会の方の「次は、本日のメイン、千葉曳三さんによる鼻責めショウです」と会場を煽ってくださる声が聞こえてきます。お客さんの興味のベクトルが交差していて、私の緊張は更に高まります。お腹痛くなってきた、と友人にもらすとその時、「目を覚ませ」といわんばかりの大音量の音が降り、舞台には様々な色の照明と、スモークの煙が注がれ「耽美会の見世物」が始まりました。

舞台に現れた栗鳥巣嬢は、小さなかわいらしい女の子でした。けれど着物はぼろぼろ、髪は振り乱れたまま。一人でゆっくり歩いてきます。手にはござ。自縛の為の縄。M女という観点のみで合点のいく、微笑。虚ろを歩き、舞台の中央(盆というそうです)まで進むと流し目でお客さんに笑いながら見栄を切りました。

「鳥追い女というね、遊郭で、もうお客が取れない女をテーマに責めの構図を考えたんだよ。やりたくてやりたくて、それでももう、出来ない。欲しくてたまらない。それが男でも愛情でも責めでも、僕には関係ないのだけど。兎に角、鳥巣ちゃんには腹に一物をもった欲しがる女を演じるように言うつもりなんだよ。僕は、そこから自分の責めを見つけていくつもりだよ。」

ステージに先生が現れ、盆の上の鳥巣嬢は誘うような仕草。自縛。あからさまに着物をはだけようとはせず除かせる美脚。挑発の意味を知っている女の動きに、私は目を見張るばかりでした。ぴゅん、と彼女の体が小さく跳ねたと思ったら自吊りは完成されていて、宙に浮く小柄な体は妖しくゆらゆら、揺れています。

先生にまた、一瞥。受けた先生はゆっくりと盆に歩み寄り、鳥巣嬢の体を力任せに引き寄せました。好きな様に女を弄ぶために、挑発に乗った男。気持の上では、もう責めが始まっているかのようでした。

吊りの時、鳥巣嬢を横たわらせると懐からマッチを出し、蝋燭に火をつけました。

彼女のしなやかな脚に、浴びせるように蝋を流しかけてゆきます。艶のある悲鳴を上げ、鳥巣嬢の顔は歪みます。盆が廻り始め、先生の手から垂れる蝋の雫はしばらくの間、止む事はありません。幾度となく繰り返すこの行為には、M女の反応を確かめるという意味があると思います。私は鳥巣嬢の反応に、挑発と悦楽を感じました。本心はこれから絡めてS男が引き出すもの。彼女の反応は十分にその予感を与えてくれる、淫らなものでした。

蝋燭の火を消し鳥巣嬢の上半身をかかえ起こすと、自縛で使っていた綿ロープを外し先生の麻縄がかかります。いわずもがな、綿ロープと違い麻縄は緊縛力も強く、肌に跡を残す程、肉に食い込んでゆきます。地味ですが、緊縛も責め。そして先生が選んだ形は逆海老縛りから鳥巣嬢の口に縄を掛るといった荒々しいものでした。更にめくり上がり露出したお尻に、手のひらで容赦加減のないスパンキング。口端から洩れる喘ぎ声のような悲鳴に会場の雰囲気が少し、熱くなったように感じました。つらいのか、うれしいのか、曖昧なままの鳥巣嬢の表情。

先生が更に麻縄を、鳥巣嬢の体に絡ませていきます。

座禅縛りでした。胡坐の姿勢で太ももを固定し、更に後ろ首に縄を通すので動けば縄がしまり、ますます動きが封じ込まれていくといった仕掛けが隠されています。開いた足を固定されるので当然、股間を隠す術はなくなります。「美しい緊縛」「ロープアート」という言葉とは対照的な、先生の緊縛。女の都合の良い様に導かせない為の縄は、責めるという一点において光ればそれだけで意味があるものなのかもしれません。

鳥巣嬢は罪人のような風情に身を落しながら、紙一重の所で背筋を伸ばしていました。悲壮感を彼女は自分で感じまいとしているのではないかと思います。観せる者として念頭においている冷静が尚、陰惨さを引き出し、観るものを魅了していく。そして先生は女が組み立てた正気を壊す事に再び、悦びを見出す。切りっぱなしの豆絞りを手にすると、艶の良い声で鳴く鳥巣嬢の口を塞いでいきます。彼女の声はくぐもったものに変わり、益々悲壮感に輝きがかかるのでした。

  Text by 彩花  後半へ続く